④ 『黒鍵』 ―― 星空阿季雄 詩歌句集 (2017.01.26)

上は Tanikawa Shuntaro 氏に見ていただいた、院長の愛着のある自作詩です。
谷川氏から最初のハガキを 2020/07/28 にいただきました(3年間の精進の成果か)。
*
―― 「新~深~信」 ――
ストリートピアノに私は昨日デビューした
見つけてあったピアノを今は
一人の大ooお姉さまが弾いている
ショパンの聞き覚えのある名曲を
j
なかなか巧く、弾き間違えと流れの途切れは少し
堂々とゆっくり弾く
自信ありそう
初めて弾きに来た私は逃げ腰
ペダル踏む足趾 asiyubi を左右伸展させる
私が見つけた
リラックスのおまじない
「おいおいワタシ、逃げなくていいのか?」
揺るがぬ古典のショパン vs 12年前のアンジェラアキ
アキの「手紙」のピアノソロ編曲譜のむずかしさなど
買い物客の知らぬこと
逃げるなよ、彼女は彼女、私は私
A子は弾き終わり、まばらな買い物客からパラパラ拍手
さあ交代、私の出番だ
フェルトの布帯で並ぶ鍵盤を覆い始めたA子さんに
「閉めんといて、僕が弾くから」
「あら、私のショパンの後を弾く人が出てきたわ」
会釈 eshaku 一瞬
挨拶とは「禅の悟りの瞬発的深さ比べ」
A子さんのお仲間に次には寄せてくれるかな。(2020/10/6 作)
*詩は私から独立して行きましたが、「A子さんの人寄せのバイトか」と言う興醒めな深読みも
あります。(2021/04/06)
~~「おとない」~~
(2021/03/26)
啓 hira かれた窓辺に
風は折々寄りましょう
耳を澄ました赤ちゃんに
遠い伝えが云いたくて。
~~「シャレオツ」~~
(2021/05/29)
だから乗り合わせる客の遠目の一人にするのさ、お洒落は
~~患者さんに向けてでなく?
接近すると卑しくなる、ネクタイ選び一つにせよ
自己に非情に超然と遠く; 究極の客を、選ぶんだ
~~白の柔らかい革靴、紐の無い・・・
そう、通販で注文するよ
自分で自分に値をつけること
漢語で何と言ったっけ
――皆まで言うな
「他人に厳しく己に甘く」
そうなり勝ちのこのご時世
敬愛する谷川さんが舞台で悪評を振り払うのを見た
自恃 jiji を顕現させる瞬間に立ち会ったんだよ
何位に付けてるか容れながらの変動相場制の俺だよ。
*
~~「鞭とキスと」~~
星空 亜樹雄 ('21/06/16)
あきメッケ。秘蔵っ子13歳、
美人じゃないけれど
あきのための歌造り 遅れにおくれ
小さ過ぎる舞台に 成長小説現在形 読むばかり
初めて買ったレコードは
「Rawhide」 ¥500ー
西部の鞭がいけないのか、この頃配信は振るわず
愛していると言うことか、足茂く サイトに詣でる
カバーで「風雪流れ旅」
またまた cover だ 「ローハイド」
あきに負けた
みらい二十年間新曲の森
12弦のローハイドの楽譜が欲しい
御神様、援けてよ。
*
~~「べらんめえ」~~
2021/07/14
青空 阿季雄
M 俊坊、あれで調子いいんだよ
D 脚が弱っているとか...
M 圧されてるだけさ、神経の時代から
筋肉に来て、ね
M 「年寄りの逃げ水」って言うけれど nainai
避暑とドライブの件が微妙で
D インプットはキツ好みだよ soyasoya
M 「穏便じゃないね」と言われたよ。
(東大お見合いからの近代恋愛の構築
枠組くらいはこっちで
今里のおまはんは smart だからな、)
身商いは見飽きないと、寸暇を盗んで
手庇tebisashi をして見つめてくれた
右手は京大に、左は修学院へと続く分か去れ。
*谷川俊太郎さんの『どうして信頼す... 』 ( 2021.6.7 朝日新聞digital 夕刊 )への返しの詩です。
~~「山の力」~~
青空 阿季雄
2022/05/28
白砂青松 御影石の砂
夏が今年もまたやって来る
名にし負う 能勢妙見山 今朝滴る櫟
法力 houriki 強き御開山
~探り当てよ夜半 息細きコードネームも~
六甲山からの蝶採集の病いは膏肓 koukou に入り
高1からは沁み入るよ、 Hey Jude も
「彼女を内に摂り込め/歌が明るくなる」と
Cezanne からか、山に問うたのは
Hillery からか 登るのは
念じるのは誰に、日蓮に からか
平静にさわれ 過去からの和声を
めりめり盛り盛り森が真理が毬
つかみだせ明日 asita へ、能勢妙見の森山を。
*
~~「白鳥の歌 三首」~~
鳥まふも しら鳥舞ふも とりまふも 摩耶の遠山澄みたる朝は
ここまでの白さの鳥よ あまねくの靡ナビかふまでの羽風して翔べ
何にか換へむ 羽交ハガひの裡ウチに頸垂れて
咥クハへ抜く羽根 矢よりも疼イタし
(上二首「京大短歌」に既発表、
三首目 塚本邦雄 主宰「玲瓏」に既発表)。
*
―― ☆~ 星の王子 三首;「精神医学はね、唯一目に見えない医学なんだ」
背後より膝折る風は危うくて直線の上に吾アは立ちにけり あえか
少年の墓碑の浮彫レリーフ幽カソかにし頸クビ曲げている小鳥を持てる あえか
出生の銀河ナポレオンの鼻腔ビクウなど原子の履歴知るすべも無く
*
~~「俳句」~~
先づ隗カイより始めよと桃咲き出づる
維新の志士はいづれ童顔花薺ナヅナ
田中雅秀は盗作した。本歌取りに非ず(2021/01/27)
×みんなハンサム入試前夜の少年ら× 呪!
龍の髭ヒゲかすめし山の霧ならむ
瀧をなして黄葉落としをり大銀杏樹オホイテフ
荒磯海アリソウミに臨みて朱し雛の段
父のシの間近きを積乱雲高く
鮎の夏渓谷タニ溯上サカノボる力充ミつ
八千草咲く庭持つひとと逢へりけり
「秋山さん」と呼ぶは羞yasaしき紅葉すれ
朝まだき鵟ノスリ潜めり黒紅葉
烏揚羽粒光ボソンに撃たれつつ翔べり
権禰宜ゴンネギとの会話温ヌクトし初詣
しばれ雪夢固かれと願ふのみ
懸命の淑気の応イラへ福娘
(全て発表済み)。
*
◎ 連作 「雪来る前を」 ・(塚本邦雄主宰) 玲瓏29巻224~225頁に発表済み
1.きらきらと金網の中に湛タタへゐる夕陽を截れり遠きラケット
2.唄ひつつ血は透きとほる フリージア畑に誰を追ひしならねど
3.埋葬を終へしと思ふ慕情など噴き上げてをり苑の噴水
4.くちびるは草絮ワタより淡く開きゐて雪来る前を汝ナレは薫れる
5.切崖キリギシに添ひて堕ちゆく岩燕 渇き遥けく胸合はせたし
6.冬深き底燃え昇る白炎に蹄灼くまで降オり来る天馬
7.没イり際の陽の紅孔雀抱擁のためにひろげむわが燃ゆる腕
8.証アカし合ふごと胸寄せて辿り来ぬ汝ナが魂の底の飛火野トブヒノ
9.くちづけは秋風に頸揺りている釣鐘草カンパネラほど拒まれたりき
10.弾道の愛をたしなめゐる汝ナレと午後の疎林を貫ヌきて鶺鴒
11.酸漿ホホヅキの内なるラムプ灯りゐりか ほのぼの朱しこの人の頬
12.人魚にはあらざる由美子抱く浜に四肢はしづくのごとく垂れゐて
13.汝ナが胸のやさしき埠頭目守マモりゐて騒立つ時も凪ぐときも海
14.初めての唇クチ触るるなれ吾亦紅ワレモカウの花の向かうも眩しくはなく
15.青春の屈葬と言ふな口惜しく抱けば汝ナレは甕より重き
16.露充ミてる甕にわが胸押しつけて花の重きを揺すりて止まぬ
17.飜ヒルガヘる波濤を仰ぎ眼を閉づる汝ナレは懼オソるることなど知らず
18.何にか換へむ 羽交ハガひの内に頸垂れて銜クハへ抜く羽根矢よりも疼イタし
19.遠つ浜に寄せては返す波の色 拒まれし日はひと際碧し
20.膝立てて汝ナが凭モタれゐる籐の椅子に波寄するなり遠き島より
*
~~呪 (京大短歌 No.5)~~
地に低く屈クグまりてあれば草の葉に砂ふりかけてゆく沓クツの人
エンジンの冷えし車に人ひそむを知らざりき吾アをうかがうものを
砕かれて木片は散れりここもとに薪マキをくだける男はありき
高さ50センチ涙は湧くものを海な沈めそ姫百合の塔
*
~~~ かみ・ひとへ(発表済)~~~
「我の背向ソムきて行かざる道に
一切の樹木みな斬キられたり」
―― 朔太郎 ――
かたくなの心と言うな凝灰岩ギョウカイの壁もわらわらと崩るるものを
辛くも 酸性土壌に根付いたる木の根の痛みよ白髪が増える
柔らかき土に喰い込み奪い取る黒き樹木の根のシルエット ('18/6/2発表)
落雷を受けし樹木の脊髄の亀裂乾ける白やわらかき
九月ナガツキの一樹は枝を捥モがれしか芽吹く不意打ちのごとき新緑
自動車は紅葉一樹に真向かえり星座のごとし一葉ひとはは
ひとしきり太樹はきしみ伸びをせりまつわる蔦を切りて枯らしつ
煎イりつけて意識のごとき太陽に本意ホイの向日葵黄キイさえ乏トモし
花弁鋭き赤き菊花がシュニッツラー輪舞のごとく回旋マワる一瞬
王室を引き絞り来し黄の薔薇も八方微塵ミジンに飛散せりける
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(2021/03/26)
平均律静かな同窓会に弾く チェンバロがレンタルになる日間近く
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