以前、神経科は神経症を診る、精神科は精神病の方を診るという大まかな分類がありました。しかし現在、国際的には神経症というとらえ方をしなくなってきています。神経症の「症」とは軽い病気という意味です。精神分裂病は薬がたいへんよく効いて軽くなってきて、統合失調症と呼ぶことになりました。百人に一人の方が統合失調症になります。先ほど述べた神経伝達物質のセロトニンとドーパミンが脳に多くなりすぎると、統合失調症が起こります。セロトニンとドーパミンの働きを抑える薬で統合失調症を軽くすることが出来るようになりました。しかし、なぜセロトニンとドーパミンが増えるのかという問題は分かっていません。
現在、神経症とは何かという問題は、答えることが難しい問いです。アメリカでは神経症という言葉を使わなくなって来ています。古典的には、心理的な原因(心因)によって起こる精神の変調のことです。脳科学の進歩により、心の働きは大脳の機能によるものと考えられるようになり、「心因性」は今後「脳機能性」と呼ばれ、脳細胞の損傷による疾患が「脳器質性」と呼ばれるでしょう。
神経症の原因となる神経伝達物質の異常は報告されていません。脳細胞の異常も見つかっていません。神経症には不安神経症、抑うつ神経症、パニック障害、強迫神経症、ヒステリーなどがあります。ここで言いたいのですが米国語を下手に翻訳して全般性(あるいは社会性)不安障害、アスペルガー障害などと言わず、それぞれの不安症; アスペルガー症と呼び換えるべきです(本症は神経症ではありませんが)。
神経症の「症」という言葉は「軽い病気」という意味です。精神病の「病」というのは「重い病気」という意味です。この病気は「軽症である」「重病である」という言い方をします。ところが科学の進歩によって良いお薬が見つかってきて、精神病の方がよく治るようになってきたのです。