ちょっと現実的な話になりますが、実は日本の心療内科の保険診療は破綻しており、医者としては患者さんの数をさばかないとクリニックの経営が成り立ちません。患者さんの話を聴いている暇がないのです。鳥のブロイラーに餌を与えるような調子で、うつの患者さんには抗うつ薬を飲ませて多重管理社会の修羅場に送り出す形になってしまっています。
「短い診察時間で処方された薬が合わない!」と、多くの患者さんが当院に来られます。多忙な皆さま、あなたの
主義主張であれば、睡眠薬、安定薬の「投薬マシーン」になることを辞するものではありません。しかし、私の本来の診療はお薬も出しますが、患者さんやクライアントやご家族のそばに座り、見守って、お話をゆっくりと聴かせていただいたり、相談に乗ったり、職場で病気休暇をもらうための診断書を書いたりすることです。思いのたけを、言いたいことを、愚痴を言うだけでも治療になります。声を出すだけでもストレスの発散になります。
以前はうつ病と抑うつ神経症を区別していましたが、現在アメリカでは神経症というくくり方をしなくなりつつあります。きっかけがはっきりせず、周期性を持って繰り返すもの、太り気味であるなど体質・気質的要素の強いもの、落ち込み方のひどいものを「うつ病」と呼びます。一方、会社が倒産した・受験に失敗した・失恋したなど、きっかけがはっきりしていて、「そんな事情ならば誰でも落ち込むよな」というような原因の分かりやすいうつを「うつ状態」と呼びます。
また「抑うつ神経症=気分変調症=ディスサイミィア」とは、心が疲れきっていてうつの程度は軽いがだらだらと長引いてすっきりせず、本人の置かれている状況に左右されやすいうつですが、うつ状態とほぼ同じと考えてください。最近「新型うつ病」「非定型うつ病」が話題になっていますが、混乱するので省略します。