神経伝達物質の中でセロトニンという物質が熱い注目を浴びています。おおまかに言って、悩んでいる人の心に働きかけるには、持ち上げる方向と押さえる方向と二つの方向があります。魂を揺さぶって元気を出させる「魂(たま)振り」と、魂を鎮めて落ち着かせる「魂(たま)しずめ」という働きかけとがあります。
現代はうつの時代と言われて、憂うつな気分に悩まされている人がたいへん多く、うつの人を救うのが我々心療内科医の大切な使命になっています。このうつの原因が解明されてきて、セロトニンという神経伝達物質が磨り減って脳の中で減少していることが、うつ病・うつ状態の原因であることが分かってきました。
脳の中のセロトニンを増やして魂(たま)振りをするお薬と、カウンセリング(特に認知行動療法)によって、うつ状態の人々を救うことが我々心療内科医の使命です。では、どんな状態をうつというのでしょうか。気分が憂うつで元気がない・仕事や家事がはかどらない・夜明けごろに一度目が覚める・朝起きづらい・午前より午後の方が調子が良い・食欲や性欲がない・何事にも興味が持てない・死にたいと思う・体重が減ったなど、これらの症状があるものをうつと呼びます。