私たちの人生は山あり谷ありです。仕事の上で「してやったり」と得意になったりプライベート・ライフでくよくよしたり、あれこれものを思うのが人間の宿命だと思います。ものを思ったり考えたりするのは、頭蓋骨の中にある脳みその働きによるものです。精神現象を司る「心」は脳にあるということです。
皆さんも脳の解剖図をどこかでご覧になったことがあるかもしれません。心は脳の中でも大脳皮質というところにあります。大脳の表面は脳細胞、神経細胞でおおわれています。これを大脳皮質と言い、ミカンの皮のようなこの皮質の厚さは2・5ミリです。脳の残りの部分は白質と呼ばれる、神経細胞から出た細長い神経線維の束から出来ていて配線工事のように細胞と細胞とを連結しています。
心電図や脳波を見た方も多いと思いますが、動物は電気信号で動いています。一つの神経細胞は0・1ボルトのパルス状の電気(活動電位)を発生します。乾電池一個が1・5ボルトですから、その10分の1ほどの電気を細胞一個が発生していることになります。人間がものを考えるのは、電気信号が脳細胞の間を行き来して考えているのです。神経細胞と神経細胞のつなぎ目のことをシナプスと言います。無理にでも日本語に翻訳すれば、神経接合部とでも言えるでしょう。神経細胞の中を電気信号が走り、シナプスで信号が化学物質に翻訳される、それを神経伝達物質と言います。シナプスのあとの神経細胞では、また電気信号に翻訳されて情報が運ばれます。このプロセスは1千分の5秒の、ほとんど瞬間的な現象です。
◆ 脳波・心電図の波型の二層構造
理数系の方に述べておきたいことがあります。
生体の電気現象の構成単位は、神経や心臓の細胞の出す「活動電位」と呼ばれる単一のインパルスですが、細胞群の巨大な塊りである脳や心臓の表面からも、また秩序のある電気信号の最高構成単位が記録できます。
「α波、β波、δ波 、θ波」という規則正しい脳波が、脳表面から記録されることも、また心臓表面から、「P-QR-ST波」という、脈すなわちポンプの一拍をなす心電図の基本単位が記録されることも、「機能的自己組織化」とも呼ぶべき驚くべき現象ではないでしょうか? (パッチクランプ波は省略)。